NHSロイヤルフリーホスピタル 3日目



いよいよ最終日の3日目。ようやくホスピタルへ行くことにも慣れてきたのに、

今日が最後だと思うと、悲しい気分になりました。

ピンク色のTシャツを着たキースさんが朝から満面の笑みで挨拶のハグをしてくれて、

3度目の大きなハートに包まれ、ここでの出会いは本当に宝物になるなと

思いました。 

世界中に数えきれないほどのセラピストがいると思いますが、会った瞬間にこれほどの

愛で包んでくれるセラピストはどれだけいるでしょう。

温かいハートは常にオープンにしておくと、相手との距離が一瞬で縮まります。

本当にここは、言葉では教えられないことをたくさん教えてもらえる場所です!




3日目は、がん病棟のあるフロアーを見学させて頂きました。

がん患者さんといっても、治療の進捗や内容は様々で、

見た目には全く治療中であることがわからない方もいますし、これから、詳しい検査や告知を控え

ている方もいらっしゃいます。


この日は、月曜日ということで、週末にご自宅で過ごされている患者さんもいて、マッサージリスト

通りには進まないと言われていました。10時頃病棟のフロアへ向かうと、1人のナースが声をかけ

てきました。朝一番にマッサージをお願いしたい女性の患者さんがいるというお話でした。

入院したばかりの方で、今日の午後、担当医から病状についてのお話をしなければならず、

その前に心を落ち着かせるマッサージをしてあげてほしいとのことでした。


私も、セラピストもその真意を汲み、彼女のもとへ向かいました。

調子はどう?と聞くと、とてもいいわという明るい返事が返ってきました。

背中のマッサージを見学させて頂きましたが、その間、彼女は窓の外の景色をじっと見つめて、

その表情は気丈にふるまっているように見えました。


セラピストは、クライアントの言葉だけを鵜呑みにすることはできません。

なぜかというと、本心ではないかもしれないからです。

セラピストだからといって、クライアントが全てを打ち明けてくれるわけではなく、

言葉では伝わってこない、心にある思いを、表情やしぐさや体の感触から感じとることも時には

必要になります。

感情移入はしないほうがいいですが、

その瞬間を生きているクライアントのスピリットを

どこかで感じとれる準備は必要なのかなと思います。


そんなに深いことを毎回考えていたら、セラピストが疲れてしまいますね。

全てのクライアントから感じれるものではありませんが、

感じる時もある、感じる時に受け止めてあげる度量を持っておくことが必要かなと思います。


マッサージは15分ほど、その間、患者さんもセラピストも、私も、何も話しませんでした。

とてもゆっくりとした穏やかな時間が流れ、マッサージを終えた時は、3人とも異空間へ行っていた

ような気分でした。マッサージが功を奏した証拠です。


彼女にもGood Luckの想いを込めて、千羽鶴を1羽プレゼントしました。


ここで大事なことは、気持ちをいつまでも引きずらないことです。

ホスピタルでのマッサージは、サービス業ではありません。

お金を頂いて行うものであっても、ボランティア精神が必要になります。

但し、ボランティア精神で行っていると、クライアントさんの気持ちを様々に汲んであげようという

気持ちが働くので、いろんな感情の葛藤も生じてしまいます。

毎回ベストだと思うマッサージを行い、修了したら、気持ちもそこにおいてきます。

でないと、その日1日終わった時、物凄く疲れてしまうからです。



そして、もう一つ大事なことは、「感覚的なものに心を乱さないこと」です。

どういうことかというと、セラピストも人間なので、患者さんに接する時、自然と五感もフル回転して

います。目で見るもの、鼻で感じる匂い、音で聞こえてくるものなど。

サロンのような素晴らしいセラピールームと違い、決して美しいものばかりではないです。

そういう感覚に心をかき乱されてしまうと、セラピストのストレスになってしまします。

ある程度の慣れも必要かもしれませんが、人を癒すことに集中できるようにすることが大切だと思

います。



その後、数名の患者さんへのマッサージを見学しました。

英語がネイティブではない方もいて、話していることを理解するのが難しいなという場面もありまし

た。しかし、どの患者さんも、とても快くマッサージを受けてリラックスされていました。

マッサージの最中に、ドクターやナースが伝えたいことや処置があっても、マッサージを尊重してく

れている雰囲気があり、セラピストも穏やかに行うことができていました。

任務は違えど、患者さんを一番に考えて行動する、それぞれの立場を尊重する、

チームの精神を感じることができました。



研修が終わり。。。

「痛みや不安を和らげ、頑張る力をサポートする」


誰でも、一歩前進したい時、頑張りたいと思う時、誰かに背中を押してもらったり、勇気づけてもら

ったり、心の助けがあると、頑張ろうとする力がより大きくなりますよね。

その助けとなるのが、ここロイヤルフリーホスピタルで行っているセラピーであると思います。


最後にキースさんのところへ戻り、3日間の感想を話していると、1人のナースがやってきました。

詳しい英語は聞き取ることができなかったのですが、突然の泣き出し、驚きました。

これという理由があるわけではないそうなのですが、キースさんに抱きしめてもらいたかったようで

す。心の葛藤が限界だったのでしょう。それを見ながら、私も泣いてしまいました。

セラピストになって、人の心や体に触れさせて頂く機会を得ると、自分自身の心の成長も常に必要

であると感じます。 キースさんのような大きなハートを持って、一人でも多くの方に寄り添えるよう

に、更に成長していきたいと思います。


実技指導をしてくれたキースさん










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